思い焦がれた野沢那智ドロン吹替版~『冒険者たち』Blu-ray を視聴する

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『冒険者たち』といえば日本人が最も好きなフランス映画、という代名詞も冠することもある名画中の名画。

 

そのブルーレイ版がかなりコストパフォーマンスが高いことを知り、購入しました。

 

冒険者たち [Blu-ray]冒険者たち [Blu-ray]

 

もともと2007年に公開40周年アニバーサリーバージョンがDVDで出たので、2年後の2017年には’67年の公開から50周年を迎えるためそれを記念したアニバーサリー盤をぜったいにリリースするだろうと思うんですが、
とりあえず今出ているバージョンがかなりお得感が高い。

実は40周年記念盤には初めてTV放映版のマヌー役アラン・ドロン=野沢那智のTV放映時の吹替版が収録され、「これはマストアイテム!!」と思ったのだけれど時既に遅し。

うっかり買いそびれてしまい、悲しい思いをした次第。
何せその40周年盤DVD、プレミアが付いて一時期8千円超の価格にまでハネ上がっていたので、こりゃ諦めるしかないナ、と。

こちらがその40周年盤DVD。今は値が下がりましたね。
冒険者たち 40周年アニヴァーサリーエディション・プレミアム [DVD]冒険者たち 40周年アニヴァーサリーエディション・プレミアム [DVD]
※ちなみに廉価版や通常版のDVDには吹替音声は未収録。

何が欲しいって、やっぱり野沢那智さんの甘い美声で話すアラン・ドロンが見たいわけですよ。たぶんプレミア値がついた理由もそれだろうし。やはり洋画ファンなら那智ドロン!!

そんなわけで次の50周年を迎える頃には必ずブルーレイでリリースもされるだろうし、それにはぜったい野沢那智版の日本語音声もパッケージされるだろうという期待の下、ひたすら待ち続けていたのですが。
その50周年を待たず早くもこの野沢那智吹替音声の入ったバージョンがひっそり初ブルーレイ化されてました。
しかもDVDとは別バージョンの吹替も入る、という実にお得な商品。

それが那智ドロンだけでなく、40周年DVDでは収録されていなかった劇中相方のローラン役リノ・ヴァンチュラ=森山周一郎のバージョンがこのブルーレイに初収録!!
(従来のDVDでは野沢那智×吉水慶)

これが定価4千円足らず(割引なら3千円以下!)というお手頃価格で買える。偉い!

ということでこれはもう買うっきゃない、と決意。

 

そんなわけで視聴。

 

 

冒頭、口笛で奏でるあの物哀しい旋律を耳にしただけで、もはや条件反射のように涙腺が刺激されてしまいます。

 

初めてこの映画を観たのは’90年代。新宿武蔵野館が今のミニシアターではなくあの武蔵野ビルの上、7階にでっかいロードショー劇場があった頃、リバイバルで。かなり大きなスクリーンがあったんだよね。
その頃は現在の武蔵野館1~3が「シネマ・カリテ」だった。

こういうシーンをスチルで見ただけで目頭が熱くなる…

うわあ…もううるうるっす。

この曲も泣けるシーンで流れるうちのひとつ。

 

なんで吹替版に拘ってたかというと、ただひたすらに、あのマヌー=ドロンの最後のセリフを、野沢那智の声で聞きたかったんだよね。

実は今まで吹替版では観賞したことがなくて、でも野沢那智ならきっとこんな感じであのセリフを言うんだろうなあ…と、ずっと想像しては反芻し続けていたそれを、ようやく実際に確かめることができて…

観たことのある方なら、どんなセリフかおわかりですよね。

で、実際の那智ドロンは、ずっと思い焦がれていたとおりの声で、想像していたとおりの口調であのセリフを語ってくれていました。

この一言が聞きたかった。

感慨無量です。
やっぱり、泣けました。

この上のスチルにあたるカットは本編にはないのだが。でもドロンの衣装は劇中のと合ってるから、編集で失われたフッテージなのかな。
あるいは宣材用に撮ってあったものなのか。

最後の舞台となる要塞島。

あの独特の姿の島。正しくは「フォール・ボワイヤール」と呼ばれるそうです。
こんな場所よく見つけたなあ、と見るたびに思う。フランス国内では日本の「軍艦島」くらいの知名度なのかな。
ナポレオンの時代から砦として造られ始め、60年かかって完成したらしい。

ここも、今はどこかの企業の所有になってるとか聞いたような…
そうなると世界遺産にするとか、そういう行末は難しそうかな。

 

『冒険者たち』はあまたある男2×女1というフォーマットの作品の、ベースになってるような作品。
日本では勝新&高倉健で『宿無(やどなし)』という何の衒(てら)いもないオマージュ作品も作られ、
本国フランスではリュック・ベッソンがやっぱりあからさまに影響を受けた『グランブルー』という映画を作り、監督として出世作になるし。

我らが千葉チャンの企画した『冒険者カミカゼ』っていうのもある。

映画に限らず、このパターンの人物の配置の物語作品てのは、この『冒険者たち』からインスパイアされたりオマージュを捧げてるものは数限りない。本当に、エバーグリーンな定番中の定番といえる名画。
恋愛沙汰になるかならないかの、ギリギリのバランスのもどかしさがフランス以上に日本人の心に響くのかもしれません。

その危ういバランスが崩れゆくとき、本作でもまた悲劇が始まるわけなんだけれど。
(それがまたたまらなく愛おしく切なくていいんですが)

 

そんな名作の誉れ高いこの作品ですが、今回調べてみると、原作小説を書いたジョゼ・ジョヴァンニはこの『冒険者たち』の内容に(特に甘ったるいところが)気に入らなかったようで、自ら同じ原作で『生き残った者の掟』という映画を制作・監督。こちらはフィルム・ノワールとしての評価も高いとか。
ところが、この『生き残った者の掟』の公開年は1966年。対して『冒険者たち』は1967年。時系列上は『冒険者たち』のほうが後発になってる。これは一体どういうこと?
脚本ができ、出演者アラン・ドロンとなった時点で原作者が気に食わず別の映画の製作に着手し先を越して公開した、という風に思えるのだけれど。

今後ちょっと調べる課題ですね。

当のジョゼ・ジョヴァンニはその後映画監督としても『ル・ジタン』『ブーメランのように』『掘った奪った逃げた』など映画マニアならそれなりに知ってる題名の作品を撮ってる。
もともと、映像的才能もあったんでしょうね。自分の小説のイメージと違えば、そりゃ文句も出るよなあ。

 

自分もこの映画を初見してから20年近くが経っているけれど、若い頃よりもじんわりと自分の人生に染みこんできているような印象を受けます。

最初に観た時は「ああ、いい映画だなあ」くらいの印象しかなかったんだけど、何年も経つうちにどんどん印象が強まり、記憶から除外することのできない存在になっていきました。
本当にいい作品って、きっとそういうものなのかも。

 

レティシアがカジノでダンスの相手とこんな言葉を交わす場面。

“もし飛行士だったら、凱旋門をくぐって飛ぶ? もしエンジニアだったら、自動車産業の革命を目指す?”
“バカげてる。そんなことしないさ”
“でしょうね”

夢を追い続けることや、それを信じ続けることが、社会や世間の常識とは乖離し続けていき孤立することだという諦念がこの会話では語られているように感じます。
それでも、社会に背き逆風に顔を向けて生きるやりきれないほどの覚悟。

こんなこと、若い頃は気づきもしなかったんですけどね。

 

年齢を重ねるごとにこの映画の秘めた哀愁や、人生から夢零れ喪失していくことの焦燥感、切なさがひしひしと感じられるようになって、このレティシアの序盤のやりとりが胸に刺さってきます。

 

切ない映画。でもすごく好きな一作です。

自分のオールタイム・ベスト10に絶対入る1本。

 

無宿(やどなし) [東宝DVDシネマファンクラブ]
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<東映オールスターキャンペーン>冒険者カミカゼ [DVD]
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グラン・ブルー 完全版&オリジナル版 -デジタル・レストア・バージョン- Blu-ray BOX 【初回限定生産】
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